はじめに:保険を見直そうとして、遺族年金にぶつかった

きっかけは、年金そのものではなく 生命保険の見直し でした。
退職して家計を組み直すなかで、ふと手が止まったんです。
「自分にもしものことがあったら、妻子に公的にいくら入るのか」「逆に妻にもしものことがあったら、僕にはいくら入るのか」——これがわからないと、保険を何円かければいいのかが決められない。

肝心の「で、いくら備えればいいの?」が、これじゃ決められないじゃないか…!
そして、その“公的にいくら入るか”の柱が、遺族年金でした。
保険は、公的保障で足りない分を埋めるもの。
だから順番として、まず遺族年金を調べないと話が始まらなかったわけです。
しかもタイミング悪く(よく?)、2028年4月から遺族年金は大きく変わります。
ニュースでは「遺族年金が5年で打ち切りに」と、不安をあおる見出しが並びました。
僕も最初は「これはマズいやつか?」と身構えた一人です。
でも、自分の家の数字を当てはめていくうちに、印象が変わりました。この改正は、誰にとっても改悪なわけではない。
妻が稼ぎ手の我が家では、もし夫が残されたら「収入の柱を失う」うえに制度でも不利——その厳しさが、今回の改正で少しやわらぎます。
一方で、僕のように途中で仕事を辞めた人には、別のところに落とし穴があった。
ここを、制度のカタログではなく「我が家の家計でどうなるか=保険をどうするか」という形で整理します。
- 遺族年金は2階建て。遺族基礎年金(子育て世帯向け・定額)+遺族厚生年金(会社員・公務員の遺族向け・報酬比例)
- 遺族基礎:子のある配偶者か子に。子2人で月約10.9万円、末子18歳の年度末まで
- 遺族厚生:亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の約3/4
仕組みを一から知りたい方は先に → 遺族年金とは?もらえる人・金額・いつまでをやさしく整理(基礎記事)。この記事は、その先の「じゃあ我が家は実際どう判断したか」です。
まず結論:誰が得して、誰が損するのか
細かい話に入る前に、地図を渡しておきます。
- ✅ 夫が残される世帯(妻に厚生年金あり) → 不利が是正。旧制度では55歳未満の夫はゼロ。それが5年の有期給付+増額+継続給付+死亡時分割に(我が家のような主夫世帯はここ)
- ✅ 子育て中の世帯 → 子が小さい時期の保障はこれまで通り(遺族基礎の子の加算は増額予定)
- ⚠️ 妻が残される+子がなく若い人 → 縮小。「終身」が「原則5年+収入次第」に。ただし今40代以上の女性は当面これまでどおり(女性は約20年かけて段階移行)
ポイントは世帯のタイプではなく「どちらが残されるか」。同じ家でも、夫が残るか妻が残るかで改正の効き方が正反対になります。
「一律で5年打ち切り」という理解は正確ではありません。ここを押さえると、ニュースの不安がだいぶ整理できます。
2028年に変わるのは、ほぼ1点

変更点はいくつもありますが、軸は たった1つ です。
「専業主婦モデル」の名残だった 男女差を、なくす
今の遺族厚生年金は、「夫が稼いで、妻は一生扶養される」という昭和の家族像が前提でした。だから——
- 妻が残されたら:終身でもらえる
- 夫が残されたら:55歳未満だと1円も出ない
という露骨な差があった。

初めて知ったときは衝撃的でした!主夫を目指すのに、あまりに不利ではないか…と。
これを男女同じ条件にそろえる、というのが今回の改正の本体です。
そのうえで、子のいない60歳未満の配偶者は、男女とも 原則5年の有期給付 になります。「5年で打ち切り」と報じられたのはこの部分です。
ただし、ただ切るのではなく、3つの安全網 がセットで用意されました。
- ① 増額:有期給付の額は 約1.3倍 に上乗せ
- ② 継続給付:5年後も、就労収入が低い人・障害のある人は受給を継続できる(年齢は問わない。ただし継続は最長65歳まで)
- ③ 死亡時分割:亡くなった配偶者の厚生年金記録を分け、残された側の老後の年金に終身で上乗せ
特に②は誤解が多いところ。「継続給付は60歳以上だけ」という説明を見かけますが、これは間違いです。年齢ではなく収入で判定 されます(単身で就労収入が月約10万円以下なら全額、おおむね月20〜30万円を超えると停止)。
そして大事な前提を1つ。この改正が効くのは「2028年4月以降に亡くなった場合」だけ。すでに受給している人や、それまでに受給権が発生した人は今のルールのままです。
我が家で計算してみた(ケースで見るのが一番早い)

制度の言葉をいくら並べても頭に入りません。自分の家でやると、一気にわかります。

ここからは我が家の実例です。あなたの家族構成に置き換えながら読んでみてください。
我が家の前提はこう。
- 僕(40代・元県職員)=主夫。妻=教員(公務員)
- 子2人(9歳・7歳)
- 僕は2025年に退職、今は妻の扶養(国民年金第3号)
ここで2つのケースを置きます。「妻に万一」と「僕に万一」 です。
ケース①:妻に先立たれたら(残されるのは夫) → 改正で不利が消える
子がいる間は、僕に遺族基礎年金(子2人で月約10.9万円)と、妻の遺族厚生年金が入ります。ここは問題なし。
問題はその後。末子が18歳になると遺族基礎は終わる(僕は54歳ごろ)。
現行制度なら:このとき僕は 1円ももらえません。「夫だから」という、まさに昭和の男女差で。
改正後なら:僕自身に5年の有期給付(※金額は妻の報酬比例次第の概算。仮に増額後で年約64万円なら × 5年 ≈ 320万円)。さらに就労収入が低ければ継続給付、そのうえ死亡時分割で老後の年金にも上乗せ。
ゼロが、累計で数百万円規模のプラスに変わる。主夫が残されたときの保障の穴が、ここではっきり埋まりました。

ゼロが数百万円に。「男女差をなくす」って、我が家にとってはこういうことか——と腑に落ちた瞬間でした。
ケース②:僕が先立ったら(残されるのは妻) → “辞めたタイミング”の落とし穴
逆に、僕が先に亡くなった場合。
妻子には遺族基礎年金(子2人で月約10.9万円、末子18歳まで)は出ます。でも——僕からの遺族厚生年金はゼロ でした。
理由はここ。遺族厚生年金が出るには、ざっくり言うと「今まさに厚生年金に入っている」か「加入期間が通算25年以上ある」かのどちらかが要る。
僕は退職して厚生年金(共済)を抜けた。そして加入期間は約22年半で、25年にまだ届いていない。この「辞めた直後で、25年にも届いていない」エアポケット にすっぽり入っていたんです。

ここ、調べていてヒヤッとしました。辞めた瞬間に保障の穴があくなんて、誰も教えてくれないんですよね。
老齢年金の受給資格は10年に短縮されましたが、遺族厚生年金の「25年」は短縮されていません。在職中なら関係ない話が、辞めた瞬間に効いてきます。
僕の場合は、主夫(第3号)でいる限り加入期間は延び続けるので、あと2〜3年・45歳ごろには25年に届き、この穴は自然にふさがります。でも、辞めた直後の数年間は確かに保障が薄い時期がありました。
ここから得た一番の学び:退職は「保険の前提」を変える
実はこれ、自分の盲点を突かれた話でもあります。
僕は在職中に、「自分に万一があっても遺族厚生年金がある」前提で生命保険を組んでいました。当時は正しかった。でも 退職した瞬間、その前提が崩れていた——上のケース②の通りです。
幸い我が家は資産があり、妻にも収入があるので実害はありません。調べた結果、
僕は家計の大黒柱ではない。資産もある。妻の収入もある。だから 生命保険は最小限でいい。
と 確信できた のが収穫でした。保険を増やす必要はない、と数字で納得できた。
ただ、もし資産が薄い人が同じことをしていたら、これは警告になります。辞めるという選択は、公的な保障の前提条件をひっそり書き換える。退職前に一度、自分の家のケースを当てはめてみる価値はあります。
おまけ:医療費の上限も上がる(保険を減らす後押し)
ついでに、医療費の話も少しだけ。高額療養費制度(ひと月の医療費の自己負担に上限を設ける仕組み)の上限額が、2026年8月から段階的に引き上げられます。
「上限が上がる=自己負担が増える」ので、一見すると痛い話です。ただ、それでも日本の公的医療は強力で、青天井になるわけではありません。我が家では、この公的保障を前提に民間の医療保険は持たない判断を続けています。ここも「保険を増やさない」結論を支える材料になりました。
まとめ:煽りの見出しに、自分の数字で答える
最後に整理します。
- 2028年改正の本体は「男女差の是正」。一律打ち切りではない
- 夫が残される側の世帯は不利が是正。我が家は妻に万一のケースでゼロ→数百万円規模のプラスに
- ただし 辞めるタイミングには落とし穴(遺族厚生年金の25年要件)
- 一番の学びは「退職は保険の前提を変える」。増やすのではなく、前提を確かめ直す
「遺族年金が5年で終わる」というニュースだけ見ると不安になります。でも、自分の家族構成と数字を当てはめてみると、答えはまったく違って見えました。
制度は、自分ごとにして初めて意味がわかる。これは、辞めて時間ができた主夫だからこそ、じっくり調べられた話でもあります。

遺族年金の仕組みそのものを先に押さえたい方は、基礎記事からどうぞ。この記事は「我が家の判断」に振り切りました。
※金額は2025年度の制度・我が家の概算に基づきます。改正の詳細や最新の金額は、厚生労働省・日本年金機構の資料をご確認ください。

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