4%ルールに縛られないFIRE|フルでもサイドFIREでも、貯めすぎなくていい

資産運用・新NISA

「年間支出の25倍を貯めれば、FIREできる」

——4%ルールから逆算した、おなじみの目標額。たとえば年300万円で暮らすなら、7,500万円。「働きながら一部を取り崩すサイドFIREなら安いでしょ?」と思っても、生活費の半分を資産でまかなうなら3,000〜4,000万円は要ります。

しかも、これは年300万円で暮らせる場合の話。家庭によっては、もっと膨らみます。

この数字を見て、そっとページを閉じたこと、ありませんか。
僕はあります。「いや、無理でしょ」と。

こんにちは。18年勤めた県庁を辞めて、総資産3,000万円で主夫FIREした、なおです。

(※FIRE=Financial Independence, Retire Early。資産と支出を整えて、働かなくても生活が回る状態をつくり、早期リタイアすること。わが家の形はこちら → 主夫FIREとは?

ため息をつくなお

僕自身、計算するたびに出てくる金額の大きさに、ずっと心が折れかけていました。 早く辞めたかった。でもゴールの遠さを感じるたびに、辛かったんです。

だから僕は、「もっと積極的に考えていい」という意見を探すようになった。——今日の話は、そういう動機から始まっています。それも、最初に置いておきます。

📋 この記事でわかること
  • 「7,500万円」という目標額は、本当に必要なのか
  • 4%ルールの”正体”と、提唱者本人が率を上げ続けている話
  • 「足りなければ戻れる」サイドFIREという発想(と、その弱点)

まず白状します:僕の意見は「ポジショントーク」です

本題の前に、大事なことを。

なお

これから話すのは、中立な結論じゃありません。 「早く辞めたかった僕」が、自分を納得させるために集めた、”積極寄り”の意見です。

人は辛いとき、自分に都合のいいデータを探してしまう。僕もそうでした。だからこれを「正解」として押しつける気はありません。選択肢として、一つ差し出すだけ。 どの数字を選ぶかは、あなたが決めてください。

その前提で、読んでもらえたら。

①「7,500万円」は、本当に必要なのか

積み上がったコインの山を前に、これだけ貯めなきゃダメなのかと考える人

まず、目標額の話から。

📖 先に、3つだけ言葉の整理(知ってる人は飛ばしてOK)
  • 取り崩し(率):貯めた資産を売って生活費にすること。年に資産の何%を使うかが「取り崩し率」(4%なら毎年4%ずつ)。
  • フルFIRE:生活費を“全部”、資産の取り崩しでまかなう(働かない)形。
  • サイドFIRE:一部は働いて稼ぎ、足りない分だけ資産から取り崩す形。だから必要額はフルより少なくて済む。

まずはフルFIREから考えます。4%ルールで逆算すると、必要額は「年間支出 ÷ 4%」=「年間支出の25倍」。年300万円なら7,500万円です。でも、取り崩し率を少し動かすと、景色が変わります。

📊 年300万円で暮らす場合の必要額
取り崩し率必要な資産
4%(教科書どおり)7,500万円
5%6,000万円
6%5,000万円

たった1%で、ゴールが1,500万円も動きます。

「7,500万なんて無理」と折れていた人が、「6,000万なら、見えるかも」に変わる。

「勝手に率を上げたら危ないでしょ」——そう思いますよね。そこが次の話です。

② そもそも4%は、「最悪の人」のための数字

古い本を開いて、4%ルールの成り立ちに「なるほど」と気づく人

4%ルールは、アメリカのウィリアム・ベンゲンが1994年に作りました。知っておきたいのは、この4%が何を基準にした数字か、です。

答えは「歴史上いちばん運の悪い時期にリタイアした人でも、ギリギリ生き残れる率」。米国の過去データで、資産を30年もたせる前提の、かなり保守的な数字です。

🔍 意外:いちばん運が悪かったのは”大恐慌の人”じゃない

あの頃は株安でも”デフレ”で物価が下がったぶん、引き出しを減らせた。本当の地獄は、株安と高インフレが同時に来た1968年(秋)に辞めた人。物価が上がる中で取り崩し額も増え、資産が一気に削られた。4%は、その”最悪の人”が30年もたせられたライン(正確には4.15%)を、さらに切り下げた数字です。

実は——

提唱者のベンゲン本人が、その後データを見直して、取り崩し率を引き上げ続けています。 当初の4%(厳密には4.15%)から、資産の分け方を工夫して4.5%、4.7%へ。近年は「今の退職者の多くは5%前後いける」「過去100年の安全率の平均は7%近い」とまで語っています。

——ただ、これには前提があります。ベンゲンが率を上げられたのは、インフレが落ち着いて株価が割安なときの話。 彼自身「インフレこそ退職者の最大の敵」と言っていて、さっきの最悪ケース(1968年組)も、原因は高インフレでした。相場によっては、率はむしろ下げるべき。率を上げられるのは順風のときの話で、どんな相場でも保証されたものじゃないんです。

他の収入源(年金やバイト)や、支出を調整できる柔軟性まで入れれば、安全に使える率はもっと上がる——という研究もあります。

⚠️ 一方で、率を”下げるべき”という強い反証もある
  • 世界で見ると別の顔:経済学者ウェイド・ファウが19カ国を“株半分・債券半分”で検証したら、4%ルールが安全だった国は一つもなかった(米国・カナダでギリギリ3.96%)。日本にいたっては、いちばん運の悪い1937年に退職した人で安全率0.26%——4%どころか1%でも危なかった。米国の20世紀は、たまたま恵まれた”勝った国”の記録かもしれない。
  • 早期リタイアなら、なおさら:30年前提の4%を50〜60年に延ばすと、話が別。FIRE界で最も読まれる試算サイト(Early Retirement Now)は「3.5%が新しい4%」とし、割高な今の相場・60年前提なら3.25%まで下げるべきとも言う。投資情報大手モーニングスターの最新レポートでも、30年の保守ケースで3.9%と、4%を下回る水準です。

“率を上げていい”とは真逆の反証も、ちゃんとある。早く辞めたい人ほど、ここは知っておいてほしい。

でも——「4%を1ミリでも超えたら破綻する」と怯えるほど、危うい数字でもありません。必要以上に恐れなくていい。

③ 「長く働く」のだって、リスクなんです

仕事に追われて疲れ、窓の外の青空に休みを求める人

ここからが、僕がいちばん伝えたいこと。

「安全のために、もっと貯めてから辞めよう」。慎重で、正しい判断です。でも、その”もっと”のあいだ、あなたは働き続ける。働き続けることにも、リスクはあります。

健康。時間。家族と過ごせたはずの数年。そして、心。

なお

僕は、辞める前の最後の1年で、少し心を病みました。不眠症です。

「もう、これ以上は続かない」という感覚が、確かにありました。

もちろん、これは僕のケース。働き続けることが、必ず健康を奪うわけじゃない。収入や人とのつながりが、心の支えになる人もいます。

ただ、“お金のために健康をすり減らす”が割に合わなくなるラインは、確かにある。

同じ状態の人は、大勢いると思います。これ以上続けたら、心か体が先に壊れかねない、という人が。

そういう人にとって、「あと2年、3年と踏ん張って、もう少し貯めてから辞めよう」は、本当に安全でしょうか。お金は守れても、その数年で健康を失ったら、元も子もない。 長く働き続けることも、今の時代、それ自体がリスクになり得る。少なくとも僕は、身をもってそう思いました。

④ そして、いちばん大事な「戻れる」という発想

自宅のソファでリラックスして、軽やかに在宅ワークする人

「5%で早めに辞めて、もし足りなくなったら?」

その答えは、拍子抜けするほどシンプルです。働けばいい。

「さっき”働くのはリスク”って言ったよね?」と思った人、鋭いです。でも、別物なんです。③で言ったのは、辞められず何年もフルタイムで縛られ続けること。④の”足りなきゃ働く”は、必要な年だけする、短期の労働。 同じ「働く」でも、拘束のされ方がまるで違います。

FIREは、一度決めたら後戻りできない、というものじゃありません。サイドFIREなら、労働収入もある。足りなくなりそうな年は多めに働き、相場がいい年はゆるめればいい。

⚠️ ただし”戻れる”を過信しない

“足りなくなる年”は、たいてい相場が悪い年——不況で、求人も減るタイミングです。しかも自分は年を取り、ブランクもある。「いつでも戻れる」と目標額を下げすぎると、戻れなかったとき取り返しがつかない。
だから”戻れる”は万能の保険じゃなく、“退路が一本ある”くらいに見ておくのが、ちょうどいい。

「一発勝負で、完璧に貯めきってから辞める」と思うから、7,500万円が要る。「足りなければ、また少し稼げばいい」と思えれば、ゴールはぐっと下がる。この”戻れる”という感覚こそ、目標額に折れている人を、いちばんラクにしてくれるんじゃないかと思います。

なお

打ち明けると、僕自身まだ、資産を取り崩してすらいません(今は現金で暮らしています)。それでも、”いざとなれば働けばいい”という退路が一本あるだけで、辞める決断は驚くほどラクになりました。

資産3,000万円+妻の収入+この退路の、合わせ技で踏み切った、というのが正直なところです。

だから正直、「4%か5%か」の論争は、資産だけで生活費を全部まかなう人ほどには、僕には切実じゃない。そもそも、取り崩す割合が小さいので。

——ただし、生活防衛資金だけは別枠で確保

ここで一つ、矛盾しそうな話を整理させてください。

「目標額は下げていい」と言いながら、「生活防衛資金(暴落初期をしのぐ現金)は必ず確保しておけ」とも思っています。逆のようで、違う。お金の種類が別なんです。

💡 お金を2種類に分けて考える
  • 下げていいお金:投資で貯める額(リスク資産のゴール)→ 7,500万→6,000万は、こっちの話
  • 削っちゃいけないお金:手元の現金(生活防衛資金)→ 万一に備えるお金で、一般には生活費の半年〜1年分。FIRE後は“暴落の年に資産を売らずにしのぐ”役目も加わるので、まずは1年分を目安に。FIRE資産とは別枠で確保。

リタイア直後に暴落が来て、下がった資産を売って生活費を作る——これがFIREでいちばん怖い(シークエンスリスク)。でも1年分くらいの現金があれば、たいていの暴落の最悪期(底)は、資産を売らずにしのげます。

だから、正しくはこう。「リスク資産のゴールは積極的に下げていい。ただし、生活防衛資金だけは、目標額とは別枠で確保しておく」。

もちろん、リーマンショック級の深く長い暴落だと、1年分でも足りないことはあります。でも、そこはさっきの“足りなきゃ働く”が効いてくる。現金1年分+いざとなれば働ける、の二段構えです。

まとめ:完璧に貯めてから、辞める必要はない

📌 この記事のまとめ
  • ① 4%で逆算した目標額は、高すぎて心が折れる。でも率を見直せば、ゴールは千数百万近づく
  • ② 4%は「最悪の人」に合わせた保守的な数字。提唱者本人も4.7〜5%に上げている。必要以上に恐れなくていい(ただし50〜60年の早期リタイアなら、率は下げる方向で)
  • ③ 長く働くのも、健康・時間・心のリスク。僕は最後の年、心と体に無理がきていた
  • ④ サイドFIREなら「足りなきゃ働く」で戻れる。ただし”戻れない年”もある前提で、生活防衛資金は別枠で確保

FIREは、完璧に貯めきってからでないと始められないものじゃない。足りなければ戻れるし、前提を変えればゴールはもっと近い。数字に折れて、心や体を犠牲にしてまで働き続ける前に——一度、前提そのものを疑ってみてほしい。

ただ、この記事で気が大きくなったら、そこで一度だけ立ち止まってください。 「やっぱり慎重にいきたい」と思うなら、それも完全に正解。大事なのは、知らずに怯えるんじゃなく、知ったうえで自分の天秤で決めることです。

それでは、また!

📚 この記事のデータの出どころ

数字の根拠です。日本語で読めるものを中心にまとめました。

※4%ルールの起源は、厳密にはベンゲンの1994年の論文です(日本語記事では「トリニティスタディ」として紹介されることも多い)。海外の研究・発言は英語が原典で、内容は本文で日本語にかみくだいています。

※本記事は筆者個人の体験と考えをまとめたもので、特定の投資手法や退職判断を勧めるものではありません。取り崩し率や金額はあくまで一例です。最終的な判断はご自身の状況に合わせて(必要に応じて専門家にも相談しつつ)行ってください。
この記事は、筆者なお自身の体験と判断をもとに執筆しています。文章の編集・校正にAIを活用していますが、内容の最終確認は筆者本人が行っています。

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