公務員を辞めるとき、知って驚いたことがあります。
「妻の扶養に入れば、年金も健康保険も、1円も払わなくていい」
会社員や公務員を辞めたら、ふつうは国民年金(月約1.8万円)と国民健康保険を、自分で払うことになります。
でも僕は、どっちもゼロ。
理由は、僕が第3号被保険者だから。
妻が公務員(=第2号)で、僕はその扶養に入っている側です。
ありがたい制度です。
ただ、恩恵にあずかっておいてなんですが――特にお金に困っているわけでもない僕まで、なぜタダなんだろう?と疑問に思ったのも本音です。
この記事では、第3号で実際にいくら得しているのかを、できるだけ正確に計算します。
そのうえで、自営業(第1号)の家庭やシングルマザー・ファザーと比べてどうなのか、そしてこの得がいつまで続くのか(実は落とし穴があります)まで、当事者の目線で正直に書きます。
📖 この記事でわかること
- 第3号被保険者だと、国民年金・健康保険でいくら浮くのか(実額)
- 同じ"専業"でも、自営業(第1号)の配偶者やシングルマザー・ファザーとの差
- この得が消える「130万円の壁」――主夫兼フリーランスの僕に直撃する話
- 「専業主婦優遇」と言われるけど、これは性別の話ではない、という話

第3号って何?|まず、僕の場合

日本の公的年金には、3つの区分があります。
| 区分 | どんな人 | 年金保険料 |
|---|---|---|
| 第1号 | 自営業・フリーランス・無職・学生など | 自分で国民年金を払う |
| 第2号 | 会社員・公務員 | 給料から厚生年金が天引き |
| 第3号 | 第2号に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者 (年収130万円未満が目安) |
自分では払わない |
僕は、公務員の妻(第2号)に扶養されているので第3号。
これに当てはまると、
- 国民年金の保険料はゼロ(払わなくても、年金記録は積み上がる)
- 健康保険料もゼロ(妻の共済の"被扶養者"として、タダで保険証がもらえる)
という、なかなかの優遇が付いてきます。
📝 基本のしくみ
第3号になれるのは、扶養している側が第2号(会社員・公務員)のとき。扶養する側が第1号(自営業など)だと、配偶者も第1号になり、自分で国民年金を払うことになります。
ここが、後で大事になってきます。
① 国民年金でいくら得?|年21.5万円(ここが一番固い数字)
まず、国民年金。
第1号の人が払う国民年金保険料は、令和8年度で月17,920円=年215,040円。
第3号の僕は、これを1円も払いません。
しかも大事なのは、払っていないのに満額を払っている第1号とまったく同じ老齢基礎年金が積み上がること。
第3号の期間は「保険料納付済期間」として扱われるので、将来もらえる年金は、ちゃんと払った人と同じです。
つまり、得している額は丸ごと保険料分――
年21.5万円、払わずに済んでいる。
ちなみに、その積み上がっていく老齢基礎年金は、令和8年度の満額で月70,608円(年約85万円)。僕の第3号期間も、この満額に向けてタダで積み上がっているわけです。
時間で見ると、僕が60歳になるまであと十数年。このまま第3号でい続ければ、年21万円超 × 残りの年数――最終的には300万〜400万円分くらいの保険料を、払わずに済む計算になります。
保険料は毎年少しずつ上がっていくので、実際はもう少し大きくなるはずです。
- 日本年金機構「国民年金保険料」:令和8年度の保険料は月17,920円
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」:老齢基礎年金の満額は月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」:第3号被保険者の期間も保険料納付済期間に含まれる

② 健康保険でいくら得?|ゼロ円(ただし、ここは幅あり)
次に、健康保険。
僕は妻の共済組合の被扶養者なので、保険料はゼロ。
しかも、妻側の共済保険料も、扶養家族が増えたからといって上がりません(被扶養者は追加負担なしで保険証が付く仕組み)。
もし被扶養者でなければ、自分で国民健康保険に入って、所得に応じて払うことになります。ここが年金と違って、人によって金額の幅が大きいところです。
- 僕のように課税される所得がほぼゼロなら、国保は"基本料金"にあたる均等割が中心で、年1.5万〜8万円くらい(※自治体で差があります)。幅が大きいのは、低所得向けの割引を受けられる世帯と、受けられない世帯があるからです。
- 逆に、課税所得が大きい人ほど国保の"所得割"が乗ってくるので、避けられている額も大きくなります。
なので健康保険の得は「最低でも国保の均等割ぶん、所得があればもっと」という見方になります。

③ で、結局いくら得してる?|僕の場合、ざっくり年23万円
ここまでの話を、僕のケースで計算してみます。
まず前提として、僕の副収入。売上は年20万円ほどで、経費を引くと……赤字です。
なので、「収入ほぼゼロの主夫」として計算します。
| 払わずに済んでいるもの | 年額 |
|---|---|
| 国民年金の保険料 | 215,040円 |
| 国民健康保険料 | 約1.5万円 |
※国保は「もし被扶養者でなかったら」の概算。わが家は僕が世帯主なので、低所得の軽減を受けられる前提の額です(自治体によって差があります)。
※国保は住民税と同じく前年の所得で決まるため、辞めた直後の1〜2年は前職の給与分で高くなります(→退職後の住民税はなぜ高い?と同じ理屈)。この表は、収入が落ち着いたあとの恒常的な概算です。
合計:ざっくり年23万円
月にならすと、2万円近く。
これが毎月、"見えない形"で賄われている――そう考えると、けっこうな金額です。
しかも妻側の共済保険料も、僕を扶養に入れたことでは1円も上がっていません。

④ "優遇"が見えるのは、比べたとき|第1号の配偶者・シングルマザー

僕ひとりを見ても、ありがたいなで終わります。
でも、他の立場と比べると、優遇のかたちがくっきり見えてきます。
自営業(第1号)の配偶者と比べて
自営業の夫・妻を持つ専業主婦/主夫は、まったく同じように家を支えていても、自分で国民年金(年21.5万円)を払います。
さらに国民健康保険も世帯の所得に応じて払う。
やっていることは僕と同じなのに、"連れ合いの働き方"が会社員・公務員か自営業かだけで、負担が天と地です。
| 第3号(僕) 相手が会社員・公務員 |
第1号の配偶者 相手が自営業 |
|
|---|---|---|
| 国民年金 | ゼロ | 年215,040円を自分で払う |
| 健康保険 | ゼロ(被扶養者) | 国保を世帯所得に応じて払う |
| 将来の基礎年金 | 満額に向けて積み上がる | 払った分だけ積み上がる |
※家事・育児という"やっていること"は同じでも、配偶者の働き方だけでこの差。
シングルマザー・シングルファザーと比べて
働いて満額の保険料を払い、子どもをひとりで育て、それでも第3号のような優遇はありません。
負担はむしろ重い。
こうして並べると、第3号は「片働き(しかも会社員・公務員側)」という、わりと限られた条件の人だけが得をする制度だと分かります。
共働き世帯や単身者が、片働き世帯の基礎年金を実質的に肩代わりしている、という指摘もよく聞きます。

⑤ でも、ただの"タダ乗り"とも言い切れない
ここまで読むと「第3号、ずるくない?」となりそうですが、フェアに反対側も置いておきます。
第3号には、批判だけでは語れない機能もあります。
- 無償の家事・育児・介護への評価。市場で値段のつかない労働を担う人に、独立した年金の権利を与える、という考え方。
- 弱い立場の配偶者を守る機能。これがないと、低収入・無収入の配偶者は年金がゼロになりかねず、離婚・死別のあとの老後貧困リスクが上がります。
だから第3号は、もともと片働き世帯の配偶者を保護するために作られた制度、というのが成り立ちです。
「優遇」と「保護」の両面があって、そこが議論を長引かせている理由でもあります。
家計に余裕のない家庭にとっては、第3号は「優遇」というより「ないと困る」制度のはずです。
一方で僕は、資産を作ってから主夫になった側。特に困っていないのにタダに乗れてしまう――僕が感じた違和感の正体は、制度そのものというより、「僕みたいなケースまでカバーされること」なのかもしれません。
冒頭の「ずるくない?」に戻ると――そう単純に片付く話ではないな、というのが調べてみての率直な感想です。
⑥ 落とし穴|この得、稼ぐと消える(130万円の壁)

ここが、主夫兼フリーランスである僕に直撃する話です。
①②の優遇は、全部「被扶養者/第3号でいられる」のが前提。
つまり、僕の細々とした副収入が年収130万円のラインを超えると、第3号から外れます。
そうなると、自分で国民年金(年21.5万円)+国民健康保険を払う側に回る。
主夫FIREで副収入が育つほど、この天井が現実味を帯びてきます。「稼げるようになった瞬間、年金と保険のタダ券を返す」構図です。
事業所得の"経費"は、税金より厳しく見られることがある
注意したいのが、事業所得を"被扶養"でどう数えるかは、保険者ごとにルールが違うこと。
税金の計算で認められる経費が、被扶養の認定では全部は引けない(売上原価しか見ない等)ケースもあって、確定申告の数字より厳しく判定されることがあります。
株や投信の"取り崩し"も、収入とみなされることがある
もうひとつ、見落としがちなのが株や投資信託の売却収入(いわゆる取り崩し)です。
同じ「NISAで売ったお金」でも、どの制度から見るかで扱いが変わります。
| どの制度から見るか | NISAの売却収入の扱い |
|---|---|
| 税金 | 非課税(税金はかからない) |
| 国保の保険料計算 | 計算に乗らない |
| 被扶養の認定 | "収入"に数えられることがある |
非課税かどうかは関係なく、実際に入ってくるお金で見られる――これが被扶養認定の世界です。
実際、公立学校共済組合のある支部の案内では、恒常的な収入の例として「株の譲渡収入や配当金」がはっきり挙げられています。
つまり、FIRE後に資産の取り崩しで生活するつもりの人は、その売却が"収入"とカウントされて、130万円のラインに乗ってくる可能性があるわけです。
※出典:公立学校共済組合滋賀支部「被扶養者の収入に関するご案内」。収入の数え方は支部・保険者によって異なります。
⚠ 先に確認しておくこと
自分が外れる/外れないの線引きは、加入している健康保険(共済)の被扶養認定基準で決まります。とくに、
① 事業所得は、どこまでが"収入"でどこからが"経費"なのか
② 株・投資信託の売却収入(取り崩し)は、どう数えられるのか
この2つは保険者ごとに扱いが分かれるところ。加入先の共済組合に一度確認しておくと安全です。

⑦ 「専業主婦優遇」と言われるけど、これは性別の話じゃない
第3号は、よく「専業主婦優遇」と、女性を前提に語られます。
でも僕は、夫が第3号・妻が公務員という逆パターン。
ここに立ってみて思うのは、第3号の本質は性別の話ではなく、世帯の"かたち"の話だということ。
「片働きで、稼ぐ側が会社員・公務員」という構造に対する優遇であって、その専業側が夫か妻かは関係ありません。
なお、第3号は廃止が決まったわけではありません。
いまの流れは「一発で廃止」ではなく、パート労働者などを厚生年金に取り込む適用拡大を通じて、第3号をじわじわ縮小していく方向です。
実際、第3号被保険者は1995年ごろの約1,220万人をピークに、いまは約640万人まで減っています。
ある日突然はしごを外される、という形にはなりにくい。
ただ、長い目で見れば縮んでいく制度であることは、頭に置いておいた方がよさそうです。

まとめ|得はしている。ただし、自覚と期限つきで
📌 この記事のまとめ
- 第3号だと、国民年金(年21.5万円)と健康保険(自治体次第で年数万円〜)がゼロ。僕の場合、合計ざっくり年23万円。年金は、払った人と同じ満額が積み上がる
- 同じ"専業"でも、自営業(第1号)の配偶者は自分で年21.5万円+国保を払う。シングルマザー・ファザーはもっと重い。比べて初めて優遇が見える
- ただし家計に余裕のない家庭には「ないと困る」制度であり、「弱い立場の配偶者の保護」という面もある
- この得は被扶養/第3号でいられるのが前提。副収入が130万円の壁を超えると消える(事業所得の経費や、株・投信の売却収入の数え方は共済ごとに要確認)
- 第3号は性別の話ではなく世帯構造の話。廃止ではなく、適用拡大で段階的に縮小していく見込み
主夫・主婦は、年金と健康保険でたしかに得をしています。
僕自身、その恩恵で生活が成り立っている部分があります。
でもその得は、「優遇されている」という自覚と、「稼ぐと消える」という期限つき。
当たり前のように受け取りつつ、いつか縮んでいくものとして、家計の前提に置いておく――それくらいの距離感が、ちょうどいいのかなと思っています。
※年金・健康保険の取り扱いや金額は、収入・家族構成・お住まいの自治体・加入している保険者(共済組合)によって異なります。正確な認定基準や金額は、日本年金機構・お住まいの自治体・加入先の共済組合にご確認ください。

コメント